演出・塙翔平が語る、
『こうもり AnotherWorld』の観どころ
著:塙 翔平(脚本 演出家/Vivid Opera Tokyoメンバー)
『こうもり AnotherWorld(以下、こうもりAW)』では、舞台装置に太田・ムーニーさん、照明デザインに渡邉菜見子さんという、普段はアーティストとして活動されている方にもご参加いただくことになりました。演出担当の私がイメージするものだけではなく、そこに他視点の感性が加わるので、全体がより良いものに仕上がるのではと感じています。
ネオンの照明は今回の演出の“顔”のひとつ。
2幕では中央にミラーのオブジェを設置する予定です。周りからの光を反射させることで、舞台全体にミラーボール的な効果が生まれ、今回の演出の中でも印象的で大事なピースである“光”を届けてくれます。その装置も、全てを整えて作るのではなく、一見ミラーで綺麗に造形されているけれどその内側は歪な凹凸がある構造で、そのデザインのアイデア自体がこうもりAWの世界感と強くリンクしていると思います。そのミラーオブジェに渡邉さんがどのような光を当てるのか、楽しみです。
そして、コンテンポラリーダンスや身体パフォーマンスをメインに活動を続けているダンサーの中村駿さんと遠田誠さんにもご参加いただけることになりました。ネオンの光のもとでは正常な動きをするが、夜会の闇に入ると溶け崩れ始めるといった要素をパフォーマンスに取り入れていただきます。彼らの動き、そしてアンサンブルの歌い手4人との掛け合いで、マジョリティーの怖さ、オルロフスキーが作り出す社会の輝かしさと不気味さを映し出していきたいです。
ネオ大正という時代を照明・舞台装置・ダンスパフォーマンス、それぞれの要素を組み合わせて作り上げていきます。オペラだけでは思いつかない観点が沢山織り交ざると思うので、そこは演出家としても非常に楽しみにしている部分です。笑える、しかしただ笑えるだけじゃない、これまでのVivid Opera Tokyoとは一味違う公演になると確信しています。
2人のダンサーによって、こうもりAWの世界がより濃くなっている。
また今回はRESONATIONとして一緒に取り組んでいる、Novanta Quattroの次回公演『天国と地獄』の台本も書かせてもらっていて、向こうの時代設定も大正。なので舞台上に同じ物を登場させ、世界観がリンクするように工夫しています。どんな共通項が存在するのか、両方を観て、より楽しんでいただきたいです!
塙 翔平
脚本 演出家/Vivid Opera Tokyoメンバー
桐朋学園大学音楽学部音楽学科声楽専攻卒業。 小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩⅥ「ジャンニ・スキッキ」スピネロッチオ役でデビュー。 演奏だけでなく演出・脚本執筆・ナレーションも多く手掛けており、2023年は「カルメン」「ヘンゼルとグレーテル」「ラ・ボエーム」「ジャンニ・スキッキ」「泣いた赤鬼」等を演出。